「全編ワンカット」(実際はワンカット風)が話題になった戦争映画『1917 命をかけた伝令』がWOWOWで放送されました。
本作は2019年12月にアメリカで上映。アカデミー賞で撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3冠を受賞。日本アカデミー賞でも優秀外国作品賞を受賞した作品です。
キャスト(撮影)
監督は『アメリカン・ビューティー』(99年)でアカデミー監督賞を受賞し、『007 スカイフォール』(12年)、『007 スペクター』(15年)など数多くのヒット作を手掛けてきたサム・メンデス。
撮影監督は『ショーシャンクの空に』(94年)、『ジェシー・ジェームズの暗殺』(07年)、『ノーカントリー』(07年)をはじめ、『ブレードランナー 2049』(17年)でアカデミー撮影賞を受賞したロジャー・ディーキンスが務めた。
ロジャー・ディーキンスの作品はどれもヒット作!
皆さんも一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか?
キャスト(俳優)
これだけの大作にもかかわらず主役に抜擢されたのはジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマンというほぼ無名の俳優。
2人を起用した理由として監督のサム・メンデスは「観客には2人の目を通して新たな体験をしてほしいから無名俳優を起用した。この規模の映画に無名俳優を使えるのは逆に贅沢なキャスティングだった」と述べ、ディーン=チャールズ・チャップマンについては「天性の俳優だ」と絶賛している。
脇を固める俳優陣も贅沢で、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13年)や『ドクター・ストレンジ』(16年)のベネディクト・カンバーバッチ。(来年1月公開される『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でもドクター・ストレンジ役で出演してますね)
『英国王のスピーチ』(10年)でアカデミー主演男優賞を受賞、『キングスマン』(14、17年)シリーズでも有名なコリン・ファース。
こちらも『キングスマン』(14、17年)シリーズや『キック・アス』(10年)など名悪役で知られるマーク・ストロングなど、そうそうたる俳優が名を連ねています。
皆さん本当にチョイ役なのですが流石は名優、いい味出してます。
ストーリー
1917年4月6日、第一次世界大戦下のフランス。西部戦線のイギリス軍デヴォンシャー連隊は撤退するドイツ軍に追い打ちをかけるべく1,600人規模の攻撃を翌日の明朝に行う作戦を決行しようとしていた。しかしそれはドイツ軍による戦略的撤退で、イギリス軍を誘い出す罠であった。
その情報を知ったエリンモア将軍(コリン・ファース)は、作戦の中止をデヴォンシャー連隊の隊長マッケンジー中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)に伝えるため、スコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)に伝書を託した。
果たしてスコフィールドとブレイクはドイツ軍の占領下をたった2人で進み、作戦が決行される翌日明朝までに伝令を伝えることができるのか・・・。
より面白く観るために史実を知ろう
本作はサム・メンデス監督の祖父アルフレッド・ヒューバート・メンデスの実話から着想を得て制作したと監督自ら述べています。アルフレッドは第一次世界大戦中、西部戦線でイギリス軍の各指揮所に指示を伝える伝令役を担っていました。
本作はあくまでもフィクションですが、実際に第一次世界大戦中の1917年代、ベルギー南部からフランス北東部にかけて戦線が構築され(西部戦線)、イギリス・フランスをはじめとする連合国とドイツ軍が交戦中でした。
また、ドイツ軍の戦略的撤退は「アルベリッヒ作戦」と呼ばれ、1917年2月9日から4月5日までの間に行われました。参考:Wikipedia 西部戦線 (第一次世界大戦)
感想
※ここからネタバレあります。
映画公開当初から、CMや様々なメディアで「全編ワンカット」というキャッチコピーを前面に押し出していたためか、どうしてもカメラワークや撮影技法に意識がいってしまいました。
ただ、ワンカット長回しの映画はこれまでにも何作か観ましたが、本作はワンカットはワンカットでもカメラは常に主人公のスコフィールドを追いかけ、スコフィールドから見た戦争を伝えます。そこが今までにない斬新さを生み、特に塹壕のシーンでは主人公が負傷兵や待機中の兵でごったがえす中をかき分けながら突き進む様子が戦争のリアルを見事に映し出しています。
主人公スコフィールドはこの戦争からは生きて帰れず、二度と家族の顔を見ることはできないと誓い出征したどこか悲壮感のある若者ですが、自らの命を投げ捨ててまで味方を救おうとする勇気を持ち合わせています。そんな難しい役を演じたジョージ・マッケイの演技力も見どころの一つです。また、 ベネディクト・カンバーバッチ、コリン・ファース、マーク・ストロングなどの実力派が、出演時間は短いですがいい味を出してます。
最も印象に残ったシーンは何といってもラスト。伝令が間に合わず塹壕を乗り越えて次々と突入していく味方部隊。スコフィールドは作戦本部のマッケンジー中佐の元に向ってその中を全力で横切っていきます。途中味方とぶつかりながらも決して諦めずボロボロの体で走り抜けるシーンは鳥肌ものです。
最後に、これから観る人は史実を少し頭に入れ、まず1回目は撮影手法に囚われず、物語に集中して観るとより面白く鑑賞できると思います。
ちなみに一般的な戦争映画に比べると戦闘シーンや過激で残酷な生々しい描写は少ないので、そういった類のものが苦手な方でも鑑賞できると思います。(スプラッター映画好きの私が言うのであまり信憑性はないですが・・・)
ワンカット度: | (5.0 / 5) |
ストーリー: | (4.5 / 5) |
ラスト: | (4.5 / 5) |
”戦争的”な生々しい描写: | (3.5 / 5) |